認知症ドック(VSRAD)

VSRAD ってなに?

VSRAD とは、Voxel-Based Specific RegionalAnalysis System for Alzheimer's Disease の略で、前駆期を含む早期アルツハイマー型認知症の診断を支援するためのソフトです。早期アルツハイマー型認知症(以下早期AD)の診断は難しく、医師の経験により診断に差が出たりすることがあるそうです。早期AD では最も早く海馬傍回(記憶に関わる部位)が萎縮することがわかっています。海馬傍回は体積も小さく、CT、MRI などの画像上では視覚的にはとても評価できません。VSRAD ではMRI 画像を利用し、この小さな海馬傍回の体積の萎縮度を正常脳と比較して、数値で評価します。

VSRAD ではMRI 画像を利用し、この小さな海馬傍回の体積の萎縮度を正常脳と比較して(※1)数値で評価します。この数値をZスコア(※2)で表し、この数値が2.0を超えると9割以上の確率でAD の疑いがあることがわかるそうです。しかし、このソフトの結果から確定診断ができるわけではなく、あくまでも早期AD を診断する上での支援をする目的で使用されます。AD の症状の進行を抑える薬の投薬は、AD の早期であればあるほど、その効果が期待できます。VSRAD を使って臨床上疑わしい症例を早期から診断していくことについては、患者さん本人はもとよりその家族のためにも大きな利益をもたらすと思われます。

※1
本ソフトウェアに実装されている健常者データは54歳~86歳の80名を使用しています。VSRAD で表示されている脳は被験者のものではなく健常者データベースに基づいたものであり萎縮しているところを色の種類でその程度を表示しています。関心領域(ROI)が海馬傍回付近にあたり、その部位の色の種類を見れば海馬傍回の萎縮とその程度が分かります。なお健常者データよりも若い年齢の患者の場合についてはエラーが出る可能性があるそうです。

※2 Zスコアとは
被験者画像と健常者平均画像を統計比較した結果、平均値からどれだけの標準偏差分離れているかを示す値です。Zスコア「2」とは、平均値から標準偏差の2倍を超えたものということになり5%の危険率で統計学的有意差があると評価されます。
Zスコア=(健常者群平均ボクセル値-被験者ボクセル値)/健常者群標準偏差
ボクセル値とは各ボクセルの灰白質容積密度を明るさ(輝度)で表した値です。
1ボクセルは2mm 立法(2mm×2mm×2mm)

早期にアルツハイマーt型認知症をみつけることができれば、薬によって認知症の症状が良くなることがあります。この薬は認知症を根本的に治すことはできませんが、認知症の症状の進行を遅らせることができます。どのような病気にもいえることですが、治療を始める時期は早い方がよいのです。検査の対象は50歳以上の方になります。50歳未満の方は萎縮に関して擬陽性を示すことがあります。

アルツハイマー型認知症とは・・・?

アルツハイマー型認知症とは認知症をきたす疾患の中で一番多い疾患です。その原因は不明ですが、脳内でさまざまな変化がおこり、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が萎縮して(小さくなって)高度の知能低下や人格の崩壊がおこる認知症です。初期の症状は、徐々に始まり、ゆっくり進行するもの忘れが特徴です。古い記憶はよく保たれますが、最近の出来事を覚えることができません。そのため同じことを何度も何度も聞きかえしたり、置き忘れが多くなります。昨日お礼の電話をしたことを忘れて今日また同じ相手に電話などということがあります。抑うつや妄想ではじまることもあります。運動麻痺や歩行障害、失禁などの症状は初期にはありません。